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札幌高等裁判所 昭和30年(ラ)21号 決定 1955年6月17日

抗告人 有限会社高島造船所

代表者取締役 鮫島秀雄

訴訟代理人 倉谷海道

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

本件抗告の趣旨ならびに理由は、別紙記載のとおりである。

記録によると、抗告人が昭和二十九年八月十七日札幌地方裁判所小樽支部のなした本件競売開始決定に対し同三十年四月二十五日異議の申立をなしたところ、同裁判所は同年同月二十六日右異議を却下する旨の決定をなし、同日その決定が抗告人に送達されたこと、同日抗告人は右却下決定に対し右裁判所に即時抗告を提起したが、同裁判所は再度の考案をすることなく、また事件を抗告裁判所である当裁判所に送付することもなく本件競売手続を進行し、既に定められていた同年同月三十日午前十時の競売期日において本件競売許可決定を言渡したこと明白である。

なるほど民事訴訟法第四百十八条の規定からして右即時抗告は、恰も本件競売手続を停止する効力を有し、したがつて、右競売許可決定はその停止中になされた違法のものであるようにも一応考えられるので、この点について考察する。競売法に基く不動産競売開始決定に対する異議申立は、これによつて爾後の手続の進行を当然停止する効力を有するものでないことは、同法に基く不動産競売手続に準用せられるべき民事訴訟法第五百四十四条第一項後段の規定の趣旨に徴し明らかであつてその異議申立が却下され、この決定に対し即時抗告が提起された場合においても同様でなんら異なるところはないものというべきである。

なんとなれば、この異議申立却下の決定に対する即時抗告における「その決定の執行停止」とは、恰も異議申立が却下されないで依然異議申立が存続すると同様の状態に置かれるというに過ぎないからである。されば右即時抗告は本件競売手続を停止する効力のないことはもちろん他にその手続の停止処分のとられていない本件においては、右即時抗告に対する裁判前に本件競落許可決定をしたからといつてこれを目して違法の決定ということはできないから、抗告人の主張はこれを採用することができない。なお、記録を精査するも、本件競落を不許とすべき理由は見当らない。

それ故原決定は相当である。

よつて、民事訴訟法第四百十四条、第三百八十四条、第九十五条、第八十九条に従い主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 猪股薫 裁判官 臼居直道 裁判官 安久津武人)

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